冬にこたつで本を読む~『源氏物語』に関する本~【読書日記】

私は『源氏物語』が好きで、それと同じくらい『源氏物語』について語った本が好きです。
以下の2冊はその中でも特に印象的だった本です。

大塚ひかり著「源氏物語 愛の渇き」
大学時代、卒論のテーマを『源氏物語』にしようと思い、源氏物語論をいろいろ読んでいるときにこの本に出会いました。私が全く気付かなかった視点から『源氏物語』が語られており、夢中になって読みました。(大学の図書館に置いてある源氏物語論とは一味違う下世話な感じが面白かったのかもしれません。)

特に印象だったのは、「六条御息所の敷地に建てられた」六条院で、「御息所の祟りが、なぜ、最も栄えた明石の君にはふりかからなかったのか」という疑問を呈し、明石の君が六条御息所に似ているという事実をあげ、「紫の上+女三宮 VS 明石の君という、六条院での構図はなんだか、藤壺と六条御息所の“代理戦争”のようにも思えるのである」と述べているところです。こんな見方もあったのかと目から鱗が落ちる気分でした。他にもそのような部分はたくさんありました。
想像だけで書かれているわけではなく、『源氏物語』以外の古典文学についても言及されています。
また、私は浮舟が嫌いだったのですが、この本を読んで印象が変わりました。
とても面白く読みましたが、卒論に引用することはしません(できません)でした。

大塚さんの本は他にもいろいろ読みました。
「なるほど!」と感心するところもあれば、「ちょっとそれは違うのでは…?」と首をかしげるところもありますが、だいたいどれも面白いです。

 

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河合隼雄著「源氏物語と日本人」
源氏物語論(特に女性論)は女性が書いたものの方が面白いように思います。(男性の書いた源氏物語論の中には読んでいて腹が立ってくるものもありますね。)
しかし、河合先生は高名な心理学者だけあって、『源氏物語』を心理学的に読み解いていてとても興味深いです。

私がすごいと思ったのは、「葵の上というと、気位ばかり高くて親しみのない女性、というイメージをもたれがちだが、はたしてそうであろうか。ある意味で言うと、葵の上は源氏を一番強く愛した-愛したいと願った-人と言えるのではなかろうか」というところです。

私は『源氏物語』の女性の中では、明石の君と葵上が好きです。
葵上を好きなのは、自分と同じで性格のきついところに共感したからだと思っていましたが、そうではなかったということに、この本を読んで気付きました。
河合先生は「葵の上は源氏が好きでたまらない。しかし、こんな源氏を愛することができるだろうか。顔を見て自分の想いを伝えようとする以前に、身体の方がこわばってしまう」とも書いています。
こんなに的確(だと私は思います)に葵上をとらえた本を、私は他に知らないです。
葵上の好きな相手に素直になれないところに、私は共感していたんだなぁ…

最近、岩波文庫から原文+注釈の新しい本が出ているので、そちらも読んでみようと思っています。

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